静かな夜だと思った。
終電も過ぎた誰もいない道に二人の悲しげな一つの影が街路灯に照らされる。強く握られた手が熱い。
サスケが居なくなると知った今、二人の関係に終わりを告げる。
愛しさと痛みが交じり合った口づけが涙となって溢れ出た夏の夜。一つになった手のひらは熱く汗をかいて、だが決して離そうとしないサスケの思いと自分の思いに握りつぶされそうだった。
禁断だと分かっていた。でもそれでもよかったのだ、一緒に居られるのなら。だが世間という儚くも浅ましい世界に捕らわれ逃げることさえ出来ぬまま終わりを告げようとしている幸せに我慢がきかなかった。何度抱きしめられたことだろう、慣れ親しんだ匂いが鼻腔をかすめ、頬を流れ落ちる雫が黒いシャツに染みをつくる。
「サ、スケ・・ッ」
やっとの思いで紡いだ言葉は微かに響くばかりで、よりいっそう強く手を握り返してきた手のひらが痛かった。背を抱く今は頼りない腕に一秒でも多く縋り付きたい。
「必ず・・・迎えに来るから」
触れ合った頬が二人の雫で濡れる。耳元でささやく男の声、叶えられる筈のない約束だと知っているのに、頷かずにはいられない。たとえそれが己の心を繋ぎ止める優しくて痛いものだとしても。