第一印象はなんだこいつ。それが気づけばいつの間にか自分の中で大切な人、と言うカテゴリーに含まれるようになってしまっていた。今ではなくてはならぬ存在でもある。仲間に言われなくとも自分で自覚できてしまうぐらいの依存性はまるで中毒ね、と紅一点に言われたのが昨日のことなように思えて仕方が無い。
だがそれでも構わないのだ。たとえ将来里の頂点に立とうとしても自分の中の存在位置は変わらない―――
「ナルトのにいちゃん!」
「おー、木の葉丸」
日の光を反射するかのような金色の髪をふわりと揺らし、その光の元が存在する空色の瞳に自分を映したこと、それだけで嬉しいと言う気持ちが体を占める。
「何してんだコレェ?」
「あぁ今さっき任務が終わったんだってばよ」
ついでだからこの面子でメシ一緒に食べようかと思って。
確かに三年前と同じような色彩をもつナルトの服は所々薄汚れ、細かな傷が見え隠れしている。自分も同じく任務帰りであるが、荷物の仕分けという忍者らしかぬ任務のおかげでそう汚れてはいない。
つまり同じ下忍と言う立場なのに与えられた任務の重要度が違うと言うこと。それはナルト面子と言い渡した人々が見慣れた深緑色のベストを着ていることがなによりも告げていて。
これはアレだ。悔しさ。
「それはダメ! にいちゃんは今から俺と一緒に修行するんだコレェ!」
尊敬する兄貴分であってほしい思いと、対等でいたいという気持ちが乗った己の指先。ありのままの想いを向けられ指差されたナルトは両目を見開き、次には目をパチクリさせていた。
我が儘であるというのは分かっている。ナルトの表情を見れば次に発せられるであろう答えも予想できてしまう。だが離れてしまった尊敬する力は近くにあればあるほど手に入れられる気がするのだ。
確かにナルトは人に教える、と言うことが決して上手くない。以前螺旋丸を教えてもらった際にそれは実感している。
だがそれ以上にナルトには何か違う、人を引きつける何かを持っている。力だけではない、心の強さと言うものを。自分はそれを他の誰でもないナルトから学びたいのだ。
「バカ言ってんじゃねーってばよ。オレってば腹減って死にそうなんだよ」
「この前修行してって言った時また今度なって言ったコレェ! 嘘付きは泥棒の終わりなんだなっ」
「終わりじゃなくて始まりだってばよ…」
メシ食ったら見てやるから、と続けられた言葉に一瞬脳裏がトリップするが、今がいいのだと暴走を始めた思いは制止には至らず、ナルトの両胸に拳を当てるという行為に成り果てる。
「あーもー。だーかーらー、後でつき合ってやるって言ってるじゃん」
「やーだー! 今がいい!」
それほど強くはない拳を受け止め呆れを含ませた声色を出すナルトの表情は眉間に皺あり、だ。
「絶対やーだぞコレェ!」
だかこちらとて負けるわけにはいかないのだ。これも一種の勝負であり勝ち負けが存在する。
了と言うまで離さないと言う意思表示として交互に打ち当てていた拳を開き、オレンジと黒の境目辺りを両手で掴む。そして三年前とは少しかわった距離をキリっと見上げた。
「…ったくお前なぁ」
少しの間を有しただろうか。見上げたことにより揺れていた空色の瞳が一度閉じられると、ゆっくりと開かれ溜息と共に言葉がもれる。そして己に向けられていた空色の双眸を後ろに佇む人々に向けると一つ謝罪の言葉を述べた。
するとどうだろう。何の障害もなく笑みを向けるナルトの仲間が口々に早く行けやら怪我させるなよ、など呟いていた。それを聞いたナルトもナルトで、呆れながらも困った表情は窺うことはできない。むしろ再度向けられた双眸にはいつものような、兄貴分としてライバルとしての瞳に戻っていて言うのだ。
「…とりあえず食べもんだけは買うからな。そこの商店寄れってばよ」
と、微かに頬を染めた表情で剣呑さを露わにする。そして言い終わるや否やそこ、と指差した店へと己の手を取り歩みを進められてはバカだと言われ続けている自分でもこれからの予定は分かるもので。
「…っ、チ、チョコも買うんだぞコレェ!」
きっと動きまくって最大に疲れてしまうのだろうと予想して。その時の対策に大好きなチョコを食べようと思い発せられた言葉に、誰が買ってやるかと返されるこの時こそ。自分が待ち望んでいた瞬間であると思ったのだった。
木ノ葉丸とナルトでした!
とりあえずお子ちゃま達とナルトさんをイチャイチャさせたい一身で打ってました。